稲荷鬼王神社:全国唯一厄を除き福を授ける鬼の王様
通の間では有名な、新宿歌舞伎町に鎮座する稲荷鬼王神社に参拝してきました。
「鬼」の字のつく神社は日本にはいくつかありますが、「鬼王」と王までつく神社はこちらの稲荷鬼王神社ただ一つのようです。
歌舞伎町のようにある意味鬼が住んでいそうな地域に、鬼の王様を祀っている神社が鎮座しているのは何かの縁なのでしょうね。
参拝日2021年6月11日
▼目次
沿革
稲荷鬼王神社の創建は、江戸時代の承応2年(1653年)のことです。この土地は古来から大久保村の聖地と言われており、氏神様として稲荷神社が建立されたのが起こりです。
この土地の百姓田中清右衛門が、旅先で病に伏してしまいました。その時病気平癒の祈りが通じ無事に帰ることができ、その感謝から宝暦2年(1752年)に紀州熊野より鬼王権現を勧請しました。
天保2年(1831年)この土地にあった稲荷神社と合祀し、稲荷鬼王神社となりました。
ちょっと不思議なのですが、紀州熊野には鬼王権現は現存していなく、こちらの神社だけが信仰を保っています。
鬼王権現は「福授け」の御名があったようで、現在「福授け」は全国で稲荷鬼王神社一社のみで行われています。
明治時代になると、旧大久保村に散在していた、火の神である火産霊神の祠や、盗難除けの神など、大久保村の地域の神々が合祀されています。
明治時代になると神社の管理は政府の管轄となり、管理のために神社の合祀が進み神社の数が少なくなっていきます。
江戸時代によく鬼王などと、縁起の悪そうな名の神社を勧請できたのか不思議に思われます。
現代の感覚なら「鬼」は縁起が悪いと敬遠されそうですが、平将門の幼名が鬼王丸と呼ばれていたそうです。
神田明神の ご祭神は平将門ですが、江戸では将門信仰が根強くありそれで敬遠されなかったのではないかと推測されています。(文献に残っているわけではありません)
ご祭神とご利益
御祭神
宇賀能御魂命:(新宿の厄除け稲荷)生成発展、商売繁盛、家内安全、子孫繁栄、福招きの神様、鬼王様(全国一社福授け)
月読見命:人の運勢をつかさどりツキを与えてくれる神様
大物主命:(別名「大黒天」)商売繁盛、心願成就、病気平癒、身体健全、縁結び
天手力男命:開運、武運長久
※月読尊は一般的には「つくよみ」と読みますが、神社のパンフレットの記載に従い「月読見命~つきよみ~」と表記しました。伊勢神宮の月読神社も(つきよみ)と読みます。
湿疹・腫物に効用
江戸時代には、湿疹・腫物や諸病のある人たちは豆腐を稲荷鬼王神社に奉納する習わしがありました。奉納した後は病気が緩解するまで豆腐断ちをし、稲荷鬼王神社で授与する「撫で守り」で患部をなでると病気が平癒するといわれていました。
明治15年くらいまでは、神社の前に豆腐屋が数店営業していたといわれます。
この信仰は明治時代まで続き、明治の文豪永井荷風も記しているほどです。
境内Pick Up
▼鳥居
▼手水舎
柄杓を使わない、手水の作法が解説されています。もちろんコロナ対応の一環です。
▼狛犬
この狛犬は、鳥居のすぐ後ろに鎮座しています。
こちらの狛犬は社殿の前に鎮座している、阿像・吽像の狛犬で明治35年ころに作られたものです。特筆すべきは左側の吽像で、胸元に子獅子が玉を銜えている姿で作られています。
吽 の獅子の玉ということで、運を与えてくれる玉と言われています。また子獅子がしっかり玉を持っていることから、子孫に福徳を与えてくれるとも言われています。
寺院の山門に鎮座する金剛力士像も、右の阿像が口を開いて怒りを表し、左の吽像は口を閉じ怒りを抑えています。こちらの狛犬も、その基本形をしっかり表現されています。
鳥居の後ろの狛犬は、どちらかというとネコ科の動物を彷彿させてくれます。
▼社殿・拝殿
歌舞伎町とは思えないほどの木々です。木々の間から差し込む光が、社殿をきれいに浮かび上がらせています。表紙の写真のほうがより分かりやすいです。
社殿内部の灯篭がとても神秘的です。
▼摂社・末社
開運恵比寿:三島神社
境内社の三島神社は、事代主命を祀っています。事代主命は恵比須様とも呼ばれ、新宿山ノ手七福神の恵比寿神は、こちらの神社となります。
こちらの恵比寿様は、文化年間(1804年~1818年)松平出雲守邸で出現した神像と伝えられています。もともとは松平家の後室に安置されていたものを、松平家の祈願所であった二尊院(東大久保)に奉納したものです。
後に二尊院は火災で焼失し、こちらの稲荷鬼王神社に奉斎され現在に至っています。
現在10月19・20日「新宿ゑびす祭」として、境内には「べったら店」が出店します。
厄除け富士:浅間神社
こちらの浅間神社も明治27年に、稲荷鬼王神社に合祀されたものです。
そして昭和5年に、西大久保の厄除け富士として再建されました。
ところが東京大空襲により石の基盤石が緩み、現在は1合目から4合目までと、5合目から頂上までが参道を挟んで向かい合わせになっています。
富士が二つに分かれ、参道は富士の胎内に通ずる道と言われています。
江戸時代には富士山信仰が流行し、東京には多くの富士山が築かれています。
▼境内
水盤台石(水鉢):新宿区指定有形文化財
鳥居の左側にあるのが、通称「力様」です。
鬼型の力士が、水盤を載せている珍しいものです。力士が四股を踏んで、病や苦しみを追い払っている姿を表現しています。
この水盤にはなかなかのいわくがあり、文政3年(1820年)に奇怪なことがあったようです。
加賀美某大邸では、毎晩庭で水浴をする奇怪な音が続いていました。そこで、加賀美某大は家宝の名刀でこの水盤の力士を切りつけました。
この名刀の力で変異が収まるかと思われましたが、家族が病気になるなど災いが降りかかってしまいました。
災いを恐れ、天保4年(1834年)にこの水盤と宝刀「鬼切丸」は稲荷鬼王神社に寄進されています。
今でも鬼の肩には刀傷があるといわれていますが、見てもわかりませんでした。
この水盤に注いだ水は、熱病や子供の夜泣きに効用があるようです。
境内いろいろ
歌舞伎町には多くの映画館がありますが、その関係者たちが古い映画のポスターを張っているようです。
この地図を見ると、現在職安通りと言われている道は鬼王様通りと呼ばれていたようですね。鬼王様通りに戻したほうが、人通りが増えそうな気がします。
天水琴
社殿の右側に天水琴があります。湯島天神の近くの心城院というお寺さんにも天水琴がありました。
竹筒に耳を当てると水の滴る音が響いてきます。
稲荷鬼王神社の天水琴
水琴窟の由来は小堀遠州の考えた、つくばいの排水装置、洞水門と言われています。
後に江戸期の庭師が水琴窟の名で音を楽しむ事を兼ねた装置として各地に作りましたが、残念な事に時代と共に忘れられた存在となり
ました。当社では往時の雅をしのび、平成十六年十一月三日に水琴窟師田村光氏により雨水を利用した水琴窟、天水琴を建設致しました。
大神様のおわします社殿の屋根からの雨水を大きな甕に溜め、少しずつ水琴窟に注いで、音を奏でる仕掛けになっています。
耳を澄ますと、地中から弦を弾く様な、かすかな響きが聴こえてきます。
滴が作りだす、可憐で、聴くたびに不規則に変化する余韻が耳の奥にしみこみ人の心をつつみこみます。
竹筒に耳を近づけて聴いてみて下さい。
尚、つくばいの水は雨水ですので飲めません。出典:稲荷鬼王神社掲示板より
摂社の三島神社のところにも竹筒が出ているので耳を当ててみましたが、こちらは特に音を聞き取ることができませんでした。
御朱印
初穂料・・・400円以上お気持ちで。
社務所:社殿左側に社務所があります。
社殿でお参り後に御朱印を、頂いてくださいね。ご神職の方に、「お参りは済みましたか?」と尋ねられました。
こちらのご神職様は、御朱印を拝受する前に神社の沿革などを話してくれます。
印象的なのは、もともと東大久保の鎮守ですが、今は町名が歌舞伎町になってしまい歌舞伎町と記載しているとのことです。
周辺情報
稲荷鬼王神社は職安通り近くにありますが、職安通りにちょっと変わったドン・キホーテがありました。
ドン・キホーテのわきの道を北側に歩いていくと新大久保です。職安通りとこの道は韓国系のお店が多く異国に来た感じがします。
私は新宿から稲荷鬼王神社に来ましたが、帰りは新大久保方面まで足を延ばしてみるのもよいでしょうね。新大久保駅までは、15分くらいです。
基本情報
所在地 | 〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-17-5 |
電話 | 03-3200-2904 |
公式HP | 未開設 |
主祭神 | 宇迦之御魂神、月夜見命、大物主命、天手力男命 |
社格 | 村社? |
創建 | 稲荷神社:承応2年(1653年) 鬼王神社:宝暦2年(1752年) |
例大祭 | 9月18日 |
アクセス | 地下鉄大江戸線・副都心線「東新宿駅」 徒歩3分 都バス「東新宿」 5分 西武新宿線「新宿駅」北口 徒歩7分 JR「新宿駅」東口 徒歩15分 地下鉄丸ノ内線・新宿線「新宿三丁目駅」 徒歩15分 JR「新大久保駅」 徒歩15分 |
まとめ
神社といえば綺麗に清められた雰囲気ですが、さすが歌舞伎町にある神社という感じで雑多感があります。
神社内には多くの解説のためのボードがあり、なかなか読みごたえがあり、現場に行き知ったことは多くあります。
境内に貼ってあった地図には、現在職安通りと呼ばれている道路が鬼王様通りと記載されていました。
なぜ鬼王様通りから職安通りと名前が変わったのでしょうかね?
そして最大の謎が、現代に鬼王権現信仰が続かなかったのでしょうかね?(ググっても判りませんでした)
※記事の情報は、参拝当時の情報となってます。
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