心城院|江戸の銘水「柳の井戸」で有名な心城院
湯島天神の男坂の坂下にあるのが、柳井堂(りゅうせいどう)心城院(しんじょういん)と言う天台宗のお寺さんで通称 湯島聖天(しょうでん)様と言われています。
聖天とは大聖歓喜天のことで、心城院は大聖歓喜天をご本尊にしています。
▼菅原道真と聖天の関係は?
心城院は湯島天神の別当寺であった喜見院の弁天堂がその起源です。
菅原道真は冤罪で太宰府に流されたとき、聖天に冤罪が晴れるようにと必死に祈ったと伝わっています。
その祈りもむなしく道真は、太宰府で没してしまいます。
道真の死後、京では災害続き天皇を含め朝廷の要人が相次いで死んでいます。
この原因を道真の怨念と判断した朝廷は、道真を神として祭り上げます。
この時賜った神合の一つに「天満大自在天神」という呼び名があり、この大自在天とは聖天の別名です。
江戸時代になり、道真と所縁の強い聖天を弁天堂に奉安したのが心城院の始まりです。
お寺に神様ゆかりの聖天が祀られているのことに、疑問に思う方もいるでしょうね!
今でこそお寺と神社は別々の法人ですが、江戸時代はお寺が神社を管理していました。
菅原道真を祀る湯島天神を管理していた喜見院の弁天堂に、道真ゆかりの聖天が祀られていても不思議がないわけです。
▼目次
沿革
繰り返しになりますが、心城院は江戸時代にあった天台宗喜見院と言う寺院の「宝珠弁財天堂」だったところです。
この喜見院と言う寺院は、湯島天神の別当寺を務めていた寺院で、富くじ(宝くじ)を発行するなどして相当に栄えていました。
元禄7(1694)年、喜見院第三世・宥海大僧都が、菅原道真と縁の深い大聖歓喜天(聖天さま)を弁天堂に奉安したのが心城院の開基とされています。
歓喜天像は、第3代天台座主慈覚大師(円仁)作と言われています。
男坂はこの時代湯島天神の表門になっていましたし、太田道灌の御殿・皓月亭跡とも伝えられています。
明治になり廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、喜見院は廃寺となってしまいましたが、弁天堂はその難を逃れ心城院と名乗り独立した寺院としてスタートしています。
心城院は江戸から東京にかけての時代、幾度かの大火災や関東大震災・東京大空襲などの大災害を奇跡的に免れてきました。
しかし、300年の歳月が経ち、近年本堂は大改修が施されその姿を一新しています。
ご本尊とご利益
ご本尊―大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)
ご利益―美髪・厄除
大聖歓喜天はヒンズー教の神様で、象頭人身のガネーシャと呼ばれています。
このガネーシャは、十一面観音の法力により仏教に取り入れられ、描かれている形像は主に象頭人身の単身と双身との物とかがあります。
心城院の大聖歓喜天像は、厨子の中に奉安されている「絶対秘仏」となっていて御開帳などは無いようです。
聖天さまのご利益は、「二股大根…夫婦和合・縁結び・家内安全など」と「巾着袋…商売繁盛・金運・子孫繁栄など」とに表され、境内や堂内、授与物などの至るところにそのご利益の象徴が印されています。
心城院HPより
聖天のご利益は高く、江戸時代には多くの信仰を集め、紀伊国屋文左衛門なども帰依しています。
境内Pick Up
▼本堂
もともと弁天堂だった心城院です、不忍池内にも弁天堂がありますよね。
▼放生池(心字池)
江戸時代のころ柳の井を水源とした池がこの付近ににあり、その池には病気平癒などの祈願のために縁起の良い亀を放つ習慣があったそうです。
そのころから、心城院は別名「亀の子寺」と呼ばれています。
その池も都市化の波により枯れてしまいましたが、平成23年に心城院の心の文字を模した池を再建しています。
平成24年には、準絶滅危惧種のニホンイシガメの五つ子がこの池で産まれています。
▼柳の井
江戸の銘水の一つが当寺の「柳の井戸」です。寺号はこの井戸から「柳井堂」(りゅうせいどう)となっています。
この井戸の水で、髪の毛を洗うと美髪になると江戸時代にはとても有名な井戸でした。
現在でも、美髪・厄除の井戸として参拝者が多くいるようです。
手水舎として口を清めた後に、髪の毛もこの霊水で清めるのがこちらの寺院での作法です。(詳しくは>>)
こちらの井戸は現在でも水量が豊富で、寺内に「防災協定井戸」があります。(下記写真)
▲防災協定井戸
井戸の水は飲料用に出来るようですが、沸騰させてからお飲みくださいと注意書きがありました。
▼水琴窟
霊水・神水など水の豊富な神社などで、たまに見るのが水琴窟(すいきんくつ)です。
水琴窟は玉砂利の上に水をかけ滴り落ちた水が地中の甕に落ちその反響が竹筒を伝わり響き、その音がまるで琴の音のようなことから水琴窟と呼ばれています。
心城院の水琴窟は、厄難を祓ってくれ、音色が心を癒してくれます。
▼境内社
荼枳尼天社―五穀豊穣・商売繁盛の守り神。
▼地蔵尊
八体地蔵―上野浄名院の八万四千体地蔵尊のうち、心城院に勧請された八体の地蔵尊。
御朱印
初穂料・・・300円
【御朱印受付時間】
9時から12時
13時から16時※12時から13時は、事前に書き置いた紙でのお渡しとなります。
※上記の時間以外でも、法要中や諸行事、その他応対できない場合は、書き置いた紙でのお渡しとなります。ご了承ください。
※本堂内が手狭なため、団体(5人以上)でのご参拝、御朱印をお求めの方は、必ず事前にご一報くださいますようお願い申し上げます。
※当山には駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。出典:心城院HPより
周辺情報
この日は上野の五條天神に参拝し、不忍池弁の脇を通り湯島天神をお参りするコースでした。
予定にはなかったのですが、男坂のふもとで心城院と出会い参拝してきました。
五條天神から湯島天神は、歩いても20分もかからない距離ですから気楽に散策できます。
春日通りをさらに西側に行くと、春日局の菩提寺である麟祥院へも行けます。(湯島天神は、春日通り沿いにあります)
関連情報:五條天神社|ヤマトタケル由来の医薬祖神を祀る上野の天神社
基本情報
所在地 | 〒113-0034 東京都文京区湯島3-32-4 |
電話 | 03-3831-1350 |
公式HP | http://www.shinjyo-in.com/ |
山号 | ― |
宗派 | 天台宗 |
寺格 | ― |
御本尊 | 大聖歓喜天 |
創建年 | 元禄7年 (西暦1694年) |
開基 | 宥海大僧都 |
正式名称 | 柳井堂 心城院 |
札所等 | 江戸三十三観音霊場7番 |
文化財 | ― |
アクセス | 地下鉄千代田線/湯島駅 徒歩2分 |
まとめ
有名な神社や仏閣を参拝する時は、周辺の神社や寺院も周るといろいろ発見があります。
心城院は、不忍池近くのためか水に関する言い伝えがあります。
江戸と言う都市は、江戸時代の初期に埋め立てられてできた都市で、水が不足していました。
埋め立て地は、井戸を掘ると塩分の混じった水しか出てきません。
そのため、良い水の出るところはとても貴重な場所でした。
良い水の出るところには、必ず寺社が建てられています。
水は、命には無くてはならないものですからね!!
心城院のご本尊大聖歓喜天はヒンズー教の神様ガネーシャの事ですが、ガネーシャと言えば「夢をかなえるゾウ」を思い出してしまいます。
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