散策 中野長者の足跡をたどる

2023年7月13日

成願寺境内
高速中央環状線に中野長者橋ICがあるので、中野長者と言う名称を知っている人は多いと思います。

でも中野長者てどんな人かを、知っている人は数少ないはずです。

今回は、中野長者の足跡をたどって新宿から中野へと散策してみます。

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▼目次

  1. 散策コース
  2. 中野長者とは
  3. 新宿十二社 熊野神社
  4. 「姿見ず橋」
  5. 中野長者屋敷跡
  6. 成願寺
  7. まとめ

散策コース

新宿駅➡新宿十二社 熊野神社➡「姿見ず橋」(現 淀橋)➡中野長者屋敷跡➡成願寺➡中野坂上駅


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中野長者とは

後に中野長者と呼ばれる鈴木九郎は、応永の頃(1394~1427)紀州熊野から現在の中野東部から新宿にかけての一帯に勢力を持っていた紀州からの移住者です。

応永の時代は、足利幕府三代目将軍義満の時代から五代将軍義量までの時代で、現代のような一世一元の制以前では最長の元号の時代でした。

この時代の特筆すべき点は、応永10年から22年までの約10年間は戦乱がなく「応永の平和」と言われていました。

紀州の鈴木氏は、熊野神社の祭祀を務める紀州の名族です。鈴木氏の一門は、全国に熊野信仰を広めるために全国へと散っていきました。鈴木姓は、現在名字の数では「佐藤」と一二を争うほどに多い名字です。

言い伝えによると、紀州からやってきた鈴木九郎は、総州葛西に馬を売りに出かけ、大いに儲けたと言われています。

ところが信心深かった九郎は、その儲けたお金すべてを浅草の観音様に奉納してしまいました。

九郎は中野のあばら家に帰宅してみてビックリ、家の中じゅうに黄金が満ちていたと言います。

ここから九郎の運はぐんぐんと伸び、ついには中野長者と呼ばれるほどの金持ちになりました。

この奇跡に感謝して九郎は、現在の新宿公園の近くに故郷の熊野神社を勧請し神社を建立しています。

ところが信心深かった九郎も徐々に心がくもり、その財を自宅以外の所に蓄財するようになっていきました。

多くの財宝を隠すために人を雇って運ばせたのですが、戻ってくるときはなぜかいつも九郎一人で戻ってきました。

そのため地元では九郎の屋敷近くの橋を、「姿見ずの橋(現・淀橋)」と呼ぶようになっていました。

このような悪事は続かづ、罰が九郎の元へと降りかかってきます。本人に降りかかれば良いのですが、愛娘の小笹に罰が降りかかってしまいました。

小笹の婚礼の夜に風雨が荒れ狂い、暴風とともに小笹は蛇に化身して熊野十二社の池に入水してしまったのです。

恐れおののいた九郎は、相州最乗寺から高僧を呼び祈祷をお願いしました。高僧の霊験により、暴風雨はおさまり池から蛇が姿を現しました。

その蛇はたちまち娘の姿に戻りましたが、にわかに湧いた紫の雲に乗って天に昇っていきました。

九郎は懺悔し、十二社池のほとりに正観寺と言う寺に作り、自らも出家し名を「正蓮」としました。

この正観寺は現在の成願寺で、九郎と小笹の墓所はこの成願寺にあります。


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新宿西口 (旧青梅街道)

旧青梅街道
新宿の伊勢丹の横を走る靖国通りは、新宿大ガードを過ぎると青梅街道と名前が変わります。

この青梅街道に、この後紹介する「姿見ず橋」こと「淀橋」が架かっています。

新宿西口にある、「旧青梅街道」の碑を今回の散策の出発点としました。

新宿西口から地下へもぐり、都庁・新宿中央公園へと歩いて行きます。

途中の住友ビルの入り口には、真新しい出雲大社の祠がありましたのでまずは、お参り。


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新宿駅から都庁などに向かう中央通りの終点に、新宿中央公園があります。

この辺りには江戸時代には、池や滝がありこの付近は風光明媚で花柳界としても栄えていました。

中央公園内にも、滝や池を再現しているのは往時を偲んでのものなのでしょうかね。

新宿中央公園
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新宿十二社 熊野神社

十二社熊野神社
十二社と書いて、「じゅうにそう」と読みます。江戸時代に読み間違いが、定着してしまったようです。

都庁の近くの新宿央公園の一角に、十二社熊野神社があります。

先ほども書きましたが、室町時代の応永年間(1394~1428)に鈴木九郎が故郷の紀州熊野三山より十二所権現を勧請したものと伝えられます。

ただこれにも異説があって、渡辺興兵衛が、天文・永禄年間(1532~69)に熊野で戦が起きた時、この地に流れ着き熊野権現を祠ったという説もあります。この渡辺興兵衛もまた、この地域を開拓した人物です。

所在地 :〒160-0023 東京都新宿区西新宿2-11-2
TEL :03-3343-5521
最寄り駅:JR「新宿駅」(西口) 徒歩10分・都営大江戸線「都庁前駅」(A5出口) 徒歩4分

熊野神社の西鳥居から階段を降りると、十二社通りへと出ます。この道を北方向へと歩いて行きますと青梅街道へとぶつかります。

熊野神社を出てすぐのところにお地蔵さまが祀られていたので、こちらにもお詣りをしてきました。

熊野神社下地蔵尊
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面長な顔立ちの地蔵尊です。


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「姿見ず橋」

淀橋

財を成した鈴木九郎は、自宅から財を隠すために熊野神社の近くと推測される場所に隠したとされています。

財宝を九郎とその従者とで運び、行きこの橋を渡るときは二人なのですが帰りは九郎一人で戻ってきたといわれています。

九郎は十数人の従者を殺し、神田川に遺体を投げ捨てたのでした。

それからこの橋は、「姿見ず橋」とか「面影橋」という不吉な名前で呼ばれるようになりました。

江戸時代になり、三代将軍徳川家光が鷹狩りで当地に訪れた時この話を聞き縁起が良くないとし、大阪の淀川に似ていることから「淀橋」と命名したという言い伝えがあります。

ちなみにこの橋の親柱は、大正13年製のものを使っているようです。
淀橋2
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淀橋周辺に歴史的なものが残っているわけではないのですが、中野長者の屋敷と熊野神社の位置関係を知りたくて少し遠回りしました。

成願寺に直接行くなら熊野神社を出て十二社通りを北に行き、セブンイレブンのある交差点を左折すると相生通りとなり成願寺の脇まで直接いけます。

淀橋を渡り青梅街道を中野坂上方面へと歩いて行きます。

中本一稲荷

中本一稲荷

中本一稲荷鳥居
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中野長者とは、所縁がなさそうですが寺社巡りをしている者としては、お参りをしないで通過するわけにはいきません。

結構急な階段で、足腰のバランスの悪い私には危険でした。

住所: 〒164-0011東京都中野区中央1-35
アクセス :地下鉄丸ノ内線「中野坂上」駅より青梅街道を下り徒歩約3分
ご祭神:稲荷神(五穀豊穣の神)・宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)(別称)倉稲魂命

中本一稲荷を後にして、青梅街道をさらに西に向かうと、山手通りとの交差点へと着きます。

この交差点のところが、中野坂上駅となっています。丸ノ内線と都営大江戸線が利用できます。

この交差点を、左に曲がり5分ほど歩くと成願寺へと着きます。

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中野長者屋敷跡

中野長者屋敷跡碑 中野長者屋敷跡墓石
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中野長者屋敷跡は、成願寺内に鈴木九郎の墓所とその碑が建てられています。

中野長者の墓内には娘の遺骨もあり、遺骨調査の結果では14歳くらいの病弱な女性だったと判明しています。

先にも書きましたが中野長者鈴木九郎は、愛娘小笹を失ったのち出家し「正蓮」と名乗り小笹供養のために正観寺という寺を造っています。

そのお寺が、現在の成願寺です。


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成願寺

成願寺
成願寺は、「じょうがんじ」と読みます。「せいがんじ」とは、読まないでください。

正式名称は多宝山成願寺と言い、曹洞宗の寺院です。

創建は600年ほど前で、若くして亡くなった娘小笹の供養のため十二社池のほとりにお堂を立て、正観寺と名づけられていました。(小笹の戒名が、真窓正観禅女)

江戸時代の寛永5年(1628年)十二社より、中野長者屋敷跡の現在地に移転し、願いがかなったと成願寺と改称されています。

住所:東京都中野区本町2 – 26 – 6
電話:03-3372-2711
アクセス :地下鉄丸ノ内線・大江戸線「中野坂上」駅から山手通り南へ350m
時間 :午前6時~午後4時30分(開門時間)


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まとめ

中野長者伝説は、日本全国に広がる朝日長者伝説の流れをくむものと考えられています。ただ成願寺には、鈴木九郎(推定)と娘(若い女性)が埋葬されていることだけは事実のようです。

新宿西口から中野坂上の成願寺まで、約2時間弱で回れるコースです。

中野坂上には宝仙寺という大きなお寺もありますから、そちらも参拝するのもよいと思います。(私は1か月ほど前に足首を捻挫し、足が痛く今回は断念しました。)

朝日長者伝説

城跡や長者の屋敷跡に財宝が埋まっているという伝説。〈朝日さし夕日かがやく木の元に〉といったたぐいの財宝のありかを暗示する歌を伴って伝承されている。栃木県佐野市赤見では,鯉になった娘の苦しみを救うために,朝日長者がその財宝を山に埋めたと伝える。そしてその場所を示す〈朝日さす夕日かがやくこの山にうるし千ばい朱千ばい〉の歌が残されている。長者の没落と,財宝が身近な場所に埋まっているのを物語るのは,人々の強い関心を引き,この伝説を根強く支える生命力になっている。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版(コトバンクより引用


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※情報は参拝した当時の情報です。

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