江戸の最強結界?:五色不動尊

水かけ不動尊
江戸の霊場巡礼シリーズ第五弾は、江戸五色不動尊を特集します。

江戸五色不動は言い伝えだと、江戸幕府3代将軍・徳川家光が大僧正・天海の建言により江戸府内から5箇所の不動尊を選び、天下太平を祈願したとよく言われています。

下の地図を見ると、江戸城を囲むようには配置されているのが分かります。

ただ江戸時代には五色不動と呼ばれるものはなく、黒・白・赤の三大不動が知られていました。

明治の末から大正時代になると五色不動という呼び名が現れてきます。また江戸時代のうわさ話などでは、五不動などが語られていたようです。

そして、家光や天海が五色不動を設けたという文献的な証拠もないようです。

なぜ五色?

平安京は、四神相応の地に建てられたということは有名な話です。四神とは、東に青龍(河川)・南に朱雀(海・池)・西に白虎(道・街道)・北に玄武(山)をさします。

この条件にあった地は、悪霊の侵入を防ぎ、福徳が得られると考えられています。

江戸は東に利根川(荒川)・南に東京湾・西に東海道など・北に富士山がそろい四神相応の地とされています。(利根川は江戸時代に銚子側へ改修されています。富士山は江戸城から見て北側にありませんが、そう設定されています)

東西南北は、青・白・赤・黒という風に色が割り振られています。五方位となると、東西南北に中央が加わり、色は黄色があてられています。

この色の考え方は、中国の五行説から来たもので、五行説は中国で仏教にも取り入れられそれが日本に伝来しています。

中央の霊獣は、麒麟が割り振られることもあります。

五行とは、「木・火・土・金・水」を根源要素とし、各要素をこの法則に従って割り振っています。

季節は四季ではなく五季で「春・夏・長夏・秋・冬」、色は「青・赤・黄・白・黒」となります。

五行の方位

青龍:木=東=青
朱雀:火=南=赤
麒麟:土=中央=黄
白虎:金=西=白
玄武:水=北=黒

五行の位置関係は上記なのですが、江戸の五色不動はこの位置関係では配置されていません。

この配置で唯一合致しているのは、目白不動のみです。目黒不動は江戸城から見て南東くらいの位置にあって、北ではありません。

天海が配置したと言われる寛永寺と増上寺は、江戸城から見て鬼門と裏鬼門の位置に正確に配置されています。

この辺の位置関係かみても、天海が関わっていれば五行の位置関係に寺院が正確に移されたことでしょうね!!(寺の所在地は、江戸時代には大火などで移ることが多くありましたが)

五色不動と言われるようになったのは、明治以降と言われていますから天海が関わってないだろうとは簡単に想像できます。

 

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▼目次

    1. 不動明王とは
    2. 五色不動尊一覧
    3. 目黒不動 瀧泉寺
    4. 目白不動 金乗院
    5. 目赤不動 南谷寺
    6. 目青不動 最勝寺教学院
    7. 目黄不動 最勝寺
    8. 目黄不動 永久寺
    9. まとめ

不動明王とは

不動明王とは、密教の教主である大日如来の化身とされ、五大明王の筆頭です。大日如来は密教にしか出てきませんが、不動明王は日蓮宗や禅宗・修験道などでも信仰されています。

日本では、観音信仰と伴に最も信仰されていて、東京でも深川不動や高幡不動など庶民に親しまれています。

憤怒像

不動明王は憤怒の顔をしていますから、帝釈天などのような軍神に見えますが、そうではありません。

あの怒りの顔は、仏門へと帰依しない衆生を憤怒の顔で導いているのです。また「魔」を退散させ、煩悩や因果を断ち切ってくれます。

分かりやすく表現すると、観音菩薩は優しく人情味を持って生徒を教育していく先生で、不動明王は力や魅力で学生を強制的にでも引っ張っていく熱血教師見たいな感じです。

どちらの先生がよいかではなく、生徒の個性によって変わってくるということです。

不動明王の教化していく側面と、「魔」を退散・煩悩や因果を断ち切るという側面があると先に書きました。この力強い側面から、平安時代後期から、厄除け、煩悩退散、戦勝、国家安泰などの利益がクローズアップされていきます 。現代につながる信仰としては、こちらの方が強いのでしょうね!


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五色不動尊一覧

 寺 名  住 所
目黒不動 瀧泉寺 東京都目黒区下目黒3丁目20−26
目白不動 金乗院 東京都豊島区高田2丁目12−39
目赤不動 南谷寺 東京都文京区本駒込1丁目20−20
目青不動 最勝寺教学院 東京都世田谷区太子堂4丁目15−1
目黄不動 最勝寺 東京都江戸川区平井1丁目25−32
目黄不動 永久寺 東京都台東区三ノ輪2丁目14−5


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目黒不動 瀧泉寺

目黒不動
目黒不動は五色不動最大の寺院で、日本三大不動の一つにもなっています。正式名称は泰叡山護國院 瀧泉寺と言います。

創建は平安時代初頭の、大同3年(808年)に天台座主慈覚大師円仁が関東を巡行した際に建てられています。

関連記事:瀧泉寺|日本三大不動の一つ目黒不動尊こと泰叡山護國院瀧泉寺

目黒不動 瀧泉寺 天台宗
〒153-0064 東京都目黒区下目黒3丁目20−26


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目白不動 金乗院

目白不動は江戸時代には現在の文京区関口江戸川公園付近にあった、真言宗豊山派の新長谷寺しんちょうこくじの本尊でした。

この目白不動像は唐から帰ってきた弘法大師(空海)が出羽・湯殿山(一説には羽黒山)に赴き修行を行っていた際に彫られた像と言われています。それがどういう経緯でこの地にあるかは、不明のようです。

新長谷寺は、江戸時代の元和4年(1618年)に奈良・長谷寺の僧・秀算によって中興されて、新長谷寺と命名されています。

寛永年間にはいり三代将軍・徳川家光は、当寺の不動明王像に五色不動のひとつとして『目白不動』の名を贈り、以後この不動明王像は目白不動明王と呼ばれるようになったそうです。

この目白不動から、この地を目白台・目白と呼ばれるようになりました。

この新長谷寺は、第二次世界大戦の折壊滅的な打撃を受け「廃寺」となり、目白不動尊像は近隣の金乗院に遷座されています。

目白不動 金乗院 真言宗豊山派
〒171-0033 東京都豊島区高田2丁目12−39



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目赤不動 南谷寺

南谷寺の創建は「大坂夏の陣」のあった元和年間(1615~1624)で、開基は万行律師と伝えられています。

万行律師は比叡山南谷の出身で、南谷寺の寺名もこれに由来しています。

修行は三重県赤目山にて行い、そこで1寸2分の黄金の不動明王を授かり諸国を巡ったのちに江戸に赴いています。

当初は駒込動坂(堂坂)に庵を結び、当時は赤目不動尊と呼ばれていました。この駒込動坂近くには将軍家鷹狩りの場があり、鷹狩りに立ち寄った三代将軍徳川家光は当寺を江戸鎮護五不動とするために現在地へと移らせました。

当時すでにあった目黒・目白にちなみ目赤不動と改称も言い渡されています。

言い伝えでは上記のようですが、現在の地に移ったのは江戸中期頃と言われてますが詳しい資料は残っていないようです。

目赤不動 南谷寺 天台宗
〒113-0021 東京都文京区本駒込1丁目20−20



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目青不動 最勝寺教学院

竹園山最勝寺教学院は、慶長9年(1604)玄応大和尚が開基になり江戸城内紅葉山に創建されました。その後赤坂三分坂、青山南町へ移転し、明治41年に現在地へ移転しています。

明治時代になり廃仏毀釈の影響などにより廃寺となった観行寺から、教学院に目青不動が移されています。

現在目青不動は、教学院の焔魔堂に祀られています。

目青不動 最勝寺教学院 天台宗
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4丁目15−1



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目黄不動 最勝寺

最勝寺は、貞観二年(860)に慈覚大師が釈迦如来像と大日如来像を刻み、これを本尊としてに一宇を草創したことが始まりです。

その後慈覚大師の高弟・良本阿闍梨により元慶元年(877)に開山されています。

こちらの不動明王像はとても歴史が古く、天平年間(729~766)に東大寺を発起した良弁により像が彫られ堂舎を建立されています。

その後最勝寺の末寺で本所表町にあった東栄寺の本尊として祀られていましたが、やはり明治になり東栄寺が廃寺になり、現在は最勝寺に祀られています。

目黄不動 最勝寺 天台宗
〒132-0035 東京都江戸川区平井1丁目25−32



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目黄不動 永久寺

永久寺の創建は古く14世紀の南北朝時代とされています。ただ当時は真言宗のお寺で名称も唯識院と記録されています。

その後禅宗・日蓮宗・天台宗と変遷し、寺名も変わっています。

寛文年間になって幕臣山野嘉右衛門(号:藤原永久)という人物が諸堂を再建し境内地も拡張・整備し寺院名も永久寺と改め現在に至っています。

こちらの不動明王像は、慈覚大師作と伝わっています。

目黄不動 永久寺 天台宗
〒110-0011 東京都台東区三ノ輪2丁目14−5



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まとめ

目黒・目白・目赤の三不動は、家光とのつながりの強い不動尊で、江戸の庶民からも信仰を集めていました。ただ目白不動は明治以降寺の勢いがうせ、空襲により寺院が焼失し現在は金乗院に移ったことは先に書きました。

後の三つの不動尊像も信仰を集めた存在だったようで、明治以降は目青・目黄不動と呼ばれるようになっています。

明治の末から大正時代になると五色不動と呼ばれるようになりましたが、その起源は調べても分かりませんでした。

※表紙の写真は、目黒不動の水かけ不動です。

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